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社内新聞

第5938号 日々新聞  2017年4月18日(火)

何かを得ることは何かを失うこと 森光子

私は別に豪邸に住みたいとも思いません。豪華な海外旅行にも興味がない。そんなものよりも、皆で一つの喜びを共有すること、たくさんの笑顔に包まれていること。それこそが最高の幸せなんです。先日テレビの「水戸黄門」にゲスト出演しました。6日間という限られた時間の中で一本分を撮るのですから、それは大変なハードスケジュールです。出番も多く、撮影スタッフも初めての方ばかり。それでも本当に楽しい時間が過ごせました。

何故ならば、皆の和がしっかりできていたからです。私が「済みません台詞を忘れてきました」とNGを出したときにも、周りの空気がピリピリせずするどころかフット和む。

「大丈夫ですよ」と声を掛けてくださる。そんな気遣いにとても助けられました。スタッフの人達はみなさん撮影のプロです。プロだからといってけっしてカリカリしない。厳しさの中にも、思いやりと和の心を持っている。穏やかな心と切れ味鋭い頭。それが真のプロなんですね。

「和の心」が失われつつあるような気がします。皆の心がバラバラで笑い声さえ一緒にならない、自分さえ笑えばそれでいいと思っている。それが個人主義だというのならば、私にはそれは合いません。一緒の輪の中で皆が穏やかに微笑んでいる、それが私にとっての幸福なのです。

第5939号 日々新聞  2017年4月19日(水)

全て100%打ち込むのは難しい  森光子

私の舞台を見て下さったお客様が、「今日は森さんから元気をもらいました」と声を掛けてくださいます。以前であれば、「今日の舞台はあの場面がよかった」「あの衣装が素敵だった」という感想が殆どでした、つまり舞台そのものへの感想でした。

「元気をもらいました」といわれるのは、舞台人としてはとても嬉しいことです。でもあまりにそうゆう人が多いとどうしてかな、と思うのです。元気をもらったり、元気をあげたり、それは本来、日々の人間関係の中に沢山あるはずです。そんな人の和が薄れているのだとしたら、日本人は少しずつ心が寂しくなっているのかも知れませんね。

いい脚本があって、良いキャスチングがされてチームワークのいい濃密な稽古ができる、自分自身も毎日楽しくそして、お客様にも喜んでもらえる、舞台女優としては、これに勝る幸福は有りません。勿論辛いこともたくさんありますが、私は女優としてそんな幸せを充分味わってきました。

その幸せと引き換えに、私は女としての幸せを、あるとき、きっぱり諦めたのです。大好きな子どもも諦め、結婚を望む気持ちも捨てました。仕事にも100%打ち込み夫や子供にも100%つくす。それが私には出来ないと思ったからです。

第5940号 日々新聞  2017年4月20日(木)

自分に出来る事を一生懸命にやる 森光子

私は出来ないことが一杯ある、知らない事もたくさんあります。皆がやっているインターネットも出来ませんいちどチャレンジしてみたのですが、やっぱり私には無理だと止めてしまいました。でも私はそれでいいと思っているんです。

出来ない事を無理に追いかけても仕方がない。全部のことを知ることなんてできっこない。自分に無理をしながら生きていくことはしたくありません。仕事さえ100%頑張ることができたら、後の事はのんびりとやればいいと思っているのです。

 社会がとても忙しくなっています。いつも何かに追い立てられあれもこれもやらなくちや、とまるで脅迫されているみたいです。人間が一人で出来る事なんてたかが知れたものではないでしょうか。自分には出来ないから出来る人に任せる。そのかわり他の人ができなくて自分に出来ることがあれば、一生懸命にやる。それが人の和だと思います。

皆の輪の中でそれぞれが自分の出来る事をやる自分の事ばかりを科ん替えるのではなく、皆の気持ちを考えながら行動する。そこには自然と和やかな気持ちが」芽生えてくるでしょう。その和やかな空気に身を委ねながら私は生きる幸せを噛みしめたいと思っています。

第5941号 日々新聞  2017年4月21日(金)

「とりあえず」やってみる 劇作家 夢枕獏

僕は学生時代から小説を書いていて、単純に、将来は小説家になりたいと思っていました。

そのためには出版社に入るのがいいと思い考えたんですがこれが落ちてしまったのです。僕らの学生時代はとても騒がしい時代で学生運動が一番盛んだった時期でした。他の事をやっていると、「君はそれでいいのか」と他人が突きつけてくる。

で、大学を卒業すると、奥上高地の山小屋で働くことになったんです。登山者の寝食から案内まで一切の世話をする仕事です。登山者より先に起き、最後に寝る。自由な時間は一日で1時間ほどしかない。あまりのキツさに辞めていく人間もたくさんいる。でも僕はたいして苦にならなかった。自分にはこんなにも耐久力があったのかと驚いたものでした。

山小屋にはいろんな人が集まっていました。事情があって、全国の旅館を渡り歩いた末たどり着いた人。事業に失敗して、逃げるように山小屋にやってきた人。山が大好きで生涯山で暮らすと決めてきた人。とにかくいろんな人とがいた。どんな生き方をしてもいいんだ、というのが解ったものです。何も無理して時代に迎合することはない。自分のやりたいことに正直に生きるのが一番いい。

もし小説で生活できないのだったら、また山小屋で働けばいい。とりあえず好きな登山をしながら、小説を書く其の覚悟で決めたら楽になりました。自分はどういきればいいのか、そんな迷いは誰にでもあるものです。「自分の人生はこうだ」と言い切れる人もいるでしょうが、そんな人は少ないと思いますね。ほとんどの人は、常に迷い、なかなか決めることができないものです。自分は何が一番合っているか、そんなことは簡単にわかるものでない。だから私はとりあえず決めてみることが大切だと思います。


by akinishi1122 | 2017-04-17 14:58 | 社内新聞

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