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僕らは

第   号 日々新聞  2015年10月1()

僕は黙らない   奥田愛基  

「黙ってはいかん。殺されてもいけないけど、でも、黙らない」

 奥田知志さんは、怯むことなく、きっぱりと、そして明るく言い切った。
 すでに報じられているように、SEALDsの中心メンバーである、奥田愛基氏が殺害予告を受けた。それだけでも卑劣で許されないことだが、さらに卑劣なことに殺害予告は、奥田愛基氏の家族までをも標的にした。
 本サイトで先日指摘したが、奥田氏の家族までターゲットとなった背景には、「週刊新潮」の父親バッシングがあったと思われる。「週刊新潮」は愛基氏の父親である奥田知志さんがホームレスの支援をしていることを「近所で迷惑」、かつて小泉首相の靖国参拝に反対したことを「反天皇主義」などと悪し様に書き立て、テロを煽ったのだ。
 さらに愛基氏が28日にツイッターで殺害予告を受けたことを公表して以降、奥田親子に対するバッシングは、ますますエスカレートしている。
 この異常な状況をどう受け止めているのか。本サイトは父親の奥田知志さんが都内で安保法制に関する講演に出席するという情報をきき、会場で直撃した。殺害予告についてたずねると、知志さんは率直にそして非常に明晰に語ってくれた。

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 ハッキリ言って怖いですよ。殺すって言われると。
 息子は、一層つらいと思いますよ。自分だけではなく、「家族も」ということを言われている。彼にとって、いちばんイヤなことだと思います。電話したときも、第一声は『申し訳ない』でした。おとといも会って話しましたけど。

 でも、「怖い」の中身は何かというと、もちろん「殺す」ということの怖さがあります。でも、もうひとつ別の怖さもあります。
 送られてきた殺害予告の手紙には、なぜ殺されるのか何も書いてないんですよ。言葉がない。なんのために我々が殺されなければならないのか、という理由がないんです。つまり、問答無用ってことでしょ。そこには、一切の対話や言葉を介さないという。
 手紙っていうのは言葉のやり取りなんだから、ふつうはもうちょっと書くでしょ。これこれこういう「理由」でと。例えば安保法制に反対しているから、というなら、理解できるし、対話もできる。しかし、それがまったくないのが、すごく怖い。

第   号 日々新聞  2015年10月2()

僕は黙らない (2)奥田愛基

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 この怖さは、憲法がないがしろにされている今の状況を象徴していると思います。
 つまり、言葉がない。議論がない。反対意見は封殺される。
国会での議論を見ていても安保法制についても「政府が総合的に判断する」のひと言だけで何も説明しない。憲法を解釈で変えてしまい法的安定性は関係ないと強弁する。説明もなければ議論も不十分であることは否めない。当然、国民の多くは理解できないままです。いや、そもそも国民の理解を得るための説明がどれだけ必要と思っていたのか疑問です。ことばを大事にしない。憲法は、ことばに対する信頼です。
 そういう時代をこの手紙は象徴しているように思います。問答無用という感じがします。一方的に、ともかく「黙れ!」と言われている。その理由さえ問うなという。

 家族の命の問題がともかく心配ですが、このままだといろんな人が黙らされていく。ほかの人にも殺害予告が来てもおかしくないように思います。
 安保法制が成立して「戦争できる国」になったわけですが、戦争状態とは何か?ってことを考えると、他国と戦いを交わすということ以前に、我々の日常が壊されるということだと思います。我々の日常を守っているもの、それを担保しているものの大元が憲法だと思います。つまり、憲法は私たちの権利を保障しており、それに基づき日常が成立していると思います。でも戦争になると、自由にものが言えなくなり、自分の持ち物も国に差し出さなくてはいけない、行動も制限されるわけです。憲法で守られているはずの我々の権利が制限されていく。対話もなく、一方的に、です。
 そう考えると、今回の問答無用の手紙は、対話がない”“言論が封殺されるという状況を示している。その意味で、既に戦時中みたいな感じがします。
 だから、黙ってはいかんと思うのです。当然殺されてもいけないし、殺されたくない。けれど、ここで黙ると、この時代の危険な空気をますます推し進めることになりかねない。だから黙るわけにはいかないと思います。

 僕は牧師です。だから、神様を信じるし、人間を信じたい。あらゆる方と対話できればと思います。こちらの意見に反対なら反対の意見をきかせてほしいと思います。
 そもそも僕と息子だって意見は一致しているわけではありません。彼は立憲主義を重んじている。一方で「じゃあ、改憲すれば、戦争してもいいのか?」と常に議論しています。ちがう意見の人に対しても、黙れと言わないのが、日本国憲法です。
 手紙を出してきた人とも、対話できると僕は信じたい。


by akinishi1122 | 2015-10-08 15:40 | 社内新聞

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