人気ブログランキング | 話題のタグを見る

中南米の旅

(60)2010年4月15日ダラス・成田・伊丹 帰国
サンパウロを13日の夜10時に発ち、アメリカのダラスに10時間ぐらいかかり着いた。ダラスでは5時間ぐらい、乗り継ぎの時間待ち。成田へのチケットを持ってのって乗った瞬間からもう日本にいるような気持ちになるから不思議なものだ。正直にいって、それまでの毎日は今日までは無事に生きれている!という思いは続いていたが、この成田への飛行機に乗りこんだ瞬間にもうそれがなくなった。安心感であろう。そして信頼感であろう。
60日間で感じることは、第一に自分の腰痛が発生しなかったこと。この火種をかかえながらの旅だったから、もし痛みだしたら、旅行の続行が出来ないのではないか、と気にしていた。最初の頃は毎日森光子体操をしていたが、次第にその体操も忘れるくらいであった。従来から旅は計画的なのが普通で僕も、なんとはなしに計画をして、それに沿って体を運んできたようだったが、今回は体の許すままに動くことにつとめた。
だからそのことで新しい発見の旅と言うのがあっていいのではないか、そんなことも気付いた。物事の反対の方にも新しい面白味があるものである。面白味とは今日のテーマは何を中心に見てみよう、であった。自分が決める関心とは我ながらよい発見ができるものだ。それは自分の旅になるからである。
第3は人種についての僕も偏見があったことを強烈に恥ずかしさというか、自分の心が如何に理論と異なった見方をしていたかだ。それが黒人への偏見が象徴的であつた。南米では逆に白人が少数であり、市民権としての生活の中心はむしろ黒人に近い有色人である。我々は日本に居るから黒人が少なく珍しいのであって、南米に行けば逆であった。黒人を見る目は「貧困」であったり、補助的仕事の割合が多いと思いがちだったが、目の前で見る現象は白人も同じように貧困者や「補助的仕事、奉仕者」がいる現実に、僕も白人の優越性として心に沁みこんでいたようである。
第5に日本人の旅行者が南米では殆ど合わなかったことだ。合う人たちは、大企業の営業マンや技術者たちである。その人々が南米に向けて製品の売り込みと技術指導で遅れている未開地に進出を図っていることだ。これは僕には形を変えた販路開拓の現代版植民地獲得のように見える。日本の企業のトップに近い人々が第一戦の開拓と先進諸国の企業と市場獲得を、しのぎを削っているようにみえる。そして自分たちの人生を懸けた戦いをしている。
中には住宅メーカーが16人もの営業マンを送りこんで日本の建築技術を普及している場面にあった。日本の住宅産業もそこまできているのである。
第6には果たして日本と比べどちらに未来があるのだろうか。と考えたとことだ。確かに日本は物が豊だ。だがこの南米では機械や電化製品、あるいは軍事技術については劣る。だが一方資源についてはとなれば自然の果実、鉱物資源については日本などより遙かに豊である。これらの国々が「自分たちの資源は自分たちのために」という動きが南米中に広がっている。これは長い眠りから覚めた勢いがある。
第7には人間の未来への安心の度合である。彼らと接して日本人だから感じることだが、彼らとの違いは自分の健康、そして人生の終末についての考えが違う。それは自分の健康を自分で考える必要の無い国に生活している人々は現在の生活を自分のために楽しく生きることができるような気がする。彼らには現在生きる、人間らしく生きるというのができるような気がする。それは日本人の高齢者の日常を見ているから気付くことである。われわれの将来どれだけお金を貯めておけばいいのか、どれだけの保険にはいっておけばいいのか、誰も分からないからである不安。そのために現在の生活が規制されている。それが各人の判断に任されているのが日本であることに気付く。みんな自己責任で自分の行く末に責任を持つ社会が日本であることに気付く。
第8は、教育についての考えである。確かに日本人は教育水準(高学歴)が高い。何故だろうか。高学歴社会が社会を動かした歴史があるからであったのは間違いない。それが現在、目の前で崩壊しているのが見えるのは、やはり高学歴、即高収入という概念が通用した100年近くの歴史があったからである。だがそれが崩壊しだしたのは20年ぐらい前からはじまった。それはコンピユータが社会化されてきたからだと思う。50代の高学歴社会ではそれまで、コンピューターの代わりとして生き辞引的な存在だった。ところが、コンピユータの出現でこれらの人々よりもコンピユータの蓄積された資料を引き出す高卒の新入社員が社会に役立つように急速に変化したから、新入社員の3倍、4倍の給与を得ている社員の価値が会社にとって負担になってきたのだった。これが高学歴社会の崩壊への道になっている。
こんなことを考えながら帰国した。

by akinishi1122 | 2010-05-09 21:33 | 旅行

<< 俳句人9条の会、小沢昭一の講演から 中南米の旅 >>